Diary -BiND Blog-

HOME > CATEGORIES > 法律相談

弁護士が教える身近な会社法/トラブルの回避

株主総会の開催と議事録をつくる意味


株式会社では,年に一度は株主総会(定時株主総会)を開催し,その議事を記録した議事録(株主総会議事録)を作成しなければなりません。

ところが,株式会社の多くは,実質的には小規模な個人企業であり,そのような会社では,役員変更,本店移転,商号変更など登記申請のために株主総会議事録が必要になれば株主総会を開催しますが,定時株主総会は開催していないことが多いのが実情です。

確かに,小規模な会社の経営者は,日常業務に追われ,株主総会などいちいち取り組む余力に乏しいことが多いと思います。
しかし,株主総会の開催とその議事録の作成は,単に「法律で定められているから」実践しなければならないというものではありません。
小規模な会社では,社長が二代目の場合などは,創業者一族で株式を分けて持ち合っていることがよくあります。
その一族間に争いがない限りは問題が顕在化しませんが,相続等をきっかけに,ひとたび争いが起きれば,株主総会を開催しなかったこと議事録を作成しなかったことが原因で,裁判にも発展しかねません。

そのような裁判でよく問題となるのが役員報酬です。
役員報酬の決定は,株主総会の承認決議が必要ですが,オーナー社長以外にも株主が存在するにもかかわらず,オーナー社長が自らの判断のみで役員報酬額を決定・支給してしまうケースがよくあります。このようなケースでは,他の株主から,株主総会決議がなかったことを理由に,役員報酬を会社に返還するようにとの請求訴訟が提起されることが多々あり,判例が積み重ねられてきました。判例の事案は様々であり,実質的に株主総会決議があったのと同視できるとした判例もありますが,そうではなく,社長に対して多額の支払が命じられた判例もあります。


いずれにせよ,株主総会の開催とその証拠となる株主総会議事録の作成が実践されていればこのようなトラブルはかなり回避できたはずです。

このコラムをお読みになった方で,少しでもお心当たりのある方が,今後は株主総会の開催と株主総会議事録の作成をやってみようか,というお気持ちになっていただければ幸いです。

2017/02/09 弁護士 今朝丸 一(けさまるはじめ)


法律相談の効用

事務所での法律相談以外に、各種団体の法律相談も担当していますが、
相談の終わりが近づいて来た頃に、
「おかげさまで頭の整理がつきました。」
とお礼を言われることがあります。

法律相談にいらっしゃる方の動機はさまざまです。

既に訴えられていて弁護士を依頼するためにいらっしゃる方もいれば、
自分のケースは現在の法律・判例・学説等に照らして結論的にはどうなるのか
という見通しや、
どうすれば有利に解決できるのか
を知りたいという方も多いようです。

あるいは、ネット等で一応の知識は得たものの、
果たして自分の考えが法律家の目から見ても正しいのかどうか確かめたい
という方や、
自分で処理するつもりだが、その際の勘所を教えて欲しい
という方もいらっしゃいます。

しかし、トラブルに巻き込まれてしまい、
一体どうしたらよいのか、
不安や怒りで一杯になり、
駆け込むようにしていらっしゃる方も少なくありません。

誰しも、自分が当事者になり渦中に立たされると
普段通りの筋道だった考え方ができなくなりがちです。


たとえば、
配偶者やその浮気相手を一体自分はどうしたいのか、
子供の問題も含めて別れたいのか別れたくはないのか。
あるいは、
突然の事件や事故と相手方の不誠実な対応に怒り心頭ではあるものの、
相手に対して何ができて、自分はどこまでやるつもりでいるのか。
混乱の中で、何がなんだかわからないようなお気持ちで相談にいらっしゃる訳です。

しかし、我が身に起こったことを弁護士に言葉で説明しようとしているうちに、
あるいは、裁判等で重要になりそうな点を質問されて答えたりして行くにつれて、
段々、落ち着いて来て冷静になり、客観的に物事を見ることができるようになって、
普段の自分を取り戻して行くのだと思います。

そして、自分が何と何を判断しなければならないのか、
そのための優先順位は何なのか
という、頭の整理がついて来る訳です。

そういう意味で、相談者の秘密を守る法的義務を負い、
法律知識や、同種の紛争解決の経験を踏まえて、
客観的な判断ができる弁護士は相談相手としては
うってつけなのでしょう。

相談しただけで、気持ちの整理がついて
相談者から思いがけず冒頭のようなお礼を言って頂き、
晴れ晴れとしたお顔を拝見すると、
仮に、事件の受任が必要無いようなケースであっても、
お役に立てた嬉しさで、これが私の天職なのだと感じます。

2015/12/7 takahashi